厚生年金と共済年金を一元化した後はこうなる(被用者年金制度の一元化 その2) 2.特別支給老齢厚生年金について 2.1 受給資格、年金額 老齢厚生年金の特例{附則20条) 「二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者については、附則8条(附則8条の2の読み替えを含む、いずれも60歳台前半の老齢厚生年金)の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用する。 ただし、附則8条2号(被保険者期間1年以上)の規定については、その者の二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして適用する」 ⇒特別支給の老齢厚生年金については、被保険者期間1年以上の要件は各種別(1号、2号、3号、4 号)の期間を合算してよいが、支給開始年齢については各種別ごとに決 める。 年金額も各号ごとに計算する。 2.2 年金額の特例、支給調整 「附則20条2項 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者であって、附則8条の規定による老齢厚生年金の受給権者であるものについては、各号の厚生年金被保険者期間ごとに、附則9条の2から9条の4(障害者特例、長期加入者特例、第三種特例)まで及び11条から11条の6(60歳台前半の在職老齢年金、同じく障害者・長期加入特例の場合、第三種特例の 場合、基本手当との調整、高年齢雇用継続基本給付金都の調整)までの規定を適用する。 この場合において、「老齢厚生年金」とあるのは「各号をあわせて一つと見なした老齢厚生年金」、「老齢厚生年金の額」とあるのは「各号の厚生年金 被保険者期間の基づく老齢厚生年金の額を合算して得た額」とする等々のほか、保険給付の額の計算及びその支給停止に関するこの法律その他政令で定める規定の適用に関し必要な読替えその他必要な事項は政令で定める」 ⇒長期加入者特例、障害者特例、第三種特例は各号ごとに判定する。 ⇒在職老齢年金は、受給権ある各号の厚生年金の合算額に対して、調整する。 2.3 支給開始年齢 特別支給の老齢厚生年の支給開始年齢(附則8条の2の改正) 「男子又は女子 (2号被保険者若しくは2号被保険者期間を有する者、3号被保険者若しくは3号被保険者期間を有する者又は4号被保険者若しくは4号被保険者期間を有する者に限る。ただし、第3種特例に該当する者、特定警察職員等(警察官、皇宮護衛官、消防吏員など)である者は除く) については、60歳とあるのは、表に掲げる年齢に読み替える」 ⇒女子であっても、第3種特例に該当する者、特定警察職員等である者は除き、公務員共済組合員等の期間に対応する特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は男子と同じとする。( 実態的には、現状とかわらず) 「同2項 女子 (1号被保険者又は1号被保険者期間を有する者に限る。ただし、第3種特例に該当する者、特定警察職員等である者は除く) については、60歳とあるのは、表に掲げる年齢に読み替える」 ⇒ 女子であって、旧厚生年金被保険者期間に対応する特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、男子の5年遅れとする。(現状とかわらず) よって、複数の種別の被保険者期間を有する者に対しては、老齢厚生年金の裁定請求、支給開始年度と年金額の改定、在職老齢年金の適用、老齢基礎年金の繰り上げなどに関する業務が非常に複雑になる 。 3.在職老齢年金 3.1 原則 本質的なところは改正されていないが、共済組合員等が厚生年金被保険者になることにより、 @老齢厚生年金の受給権者が共済組合員等になった場合、現行では在職老齢年金の仕組みは適用されていなかったが、施行日(平成27年10月1日)以降は厚生年金2号、3号、4号被保険者になることになり、厚生年金保険法による在職老齢年金の仕組みが、新たに適用され始める。 ⇒調整なしから低在老へ、65歳以上の者は調整なしから高在老へ A退職共済年金の受給権者が厚生年金保被保険者になった場合、現行では所得制限による調整(高在老)が適用されていたが、施行日以降は厚生年金保険法の適用によることになる。 ⇒高在労から低在労へと厳しくなる。 B退職共済年金の受給権者が、65歳以降も国家・地方公務員であり続ける場合、現行では低在労で調整されていたが、施行日以降は厚生年金法の適用によることになる。 ⇒低在労から高在労へと緩い調整になる。 Cただし実際には、既に受給しているもの、受給権は既にあるものの施行日以降請求したもの、施行日以降に2号、3号、4号被保険者期間の老齢厚生年金の受給権が発生するもの等々があり、法の読み替えや3.3で紹介する暫定措置の適用などにより、原則とは異なる取扱いになる場合がある。 注:低在労とは28万円基準による調整(支給停止) 高在労とは46万円基準による調整(支給停止) 3.2 法改正部分 @国会議員及び地方公共団体議員への適用(厚生年金保険法46条の改正) 「老齢厚生年金の受給権者が被保険者である日、国会議員若しくは地方公共団体議会の議員である日が属する月において、・・・・・・」 ⇒太字部分を追加。議員も在職中であるとし、在職老齢年金の仕組みを適用することに。 A)昭和12年4月1日以前生まれの70歳以上在職者にも高在労を適用 ⇒70歳以上の使用される者に対しても高在老の仕組みを導入した際に、施行日前の者は適用しないとしていた経過措置を廃止 3.3 暫定措置 (1)施行日前に支給事由が生じた老齢厚生年金の受給権者で、公務員共済組合員等であったものが厚生年金被保険者になった場合は高在労を適用するが、その支給停止額は(総報酬月額相当額+基本月額)の1/10を限度とする。(改正法附則13条1項) (2)施行日前に支給事由が生じた特別支給老齢厚生年金の受給権者で、公務員共済組合員等であったものが厚生年金被保険者になった場合は低在労を適用するが、その停止額は(総報酬月額相当額+基本月額)の1/10(限度とする。 ただし、1/10した額が(総報酬月額相当額+基本月額ー35万円)を超えるときは、(総報酬月額相当額+基本月額ー35万円)を限度とする。(改正法附則13条2項) (3)老齢厚生年金の受給権者で施行日前の退職共済年金であるものに対する高在労については、老齢厚生年金額と旧退職共済年金の合計額について適用する。 この場合も、(1)に準じた暫定措置を講じる。 (4)特別支給老齢厚生年金の受給権者で施行日前の退職共済年金であるものに対する低在労については、特別支給老齢厚生年金額と旧退職共済年金の合計額について適用する。 この場合も、(2)に準じた暫定措置を講じる。(改正法附則15条) (5)施行日前の退職共済年金または特別支給退職共済年金の受給権者に対する在職老齢年金の仕組みは、厚生年金保険法によるものとし、上記の(1)、(2)、(3)、(4)による暫定措置を適用する。(改正法附則17条) |