厚生年金と共済年金を一元化した後はこうなる(被用者年金制度の一元化 その3) 4.未支給年金(37条、改正せず) 「保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる」 注:共済年金では「生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、これらがいない場合は 相続人」となっていた。 一元化後は、
障害厚生年金の支給要件(47条、改正せず)、遺族厚生年金の支給要件(58条、改正せず) 「障害厚生年金は、初診日において被保険者であった者が、障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。 ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに、国民年金の被保険者期間があるときで、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない」 ⇒障害共済年金、遺族基礎年金においては、47条後段のただし書きに相当する条項がなかった。 一元化後は、
6.遺族年金(転給) 遺族厚生年金の受給優先順位(59条2項、改正せず) 「父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない」 ⇒遺族厚生年金では、上記59条2項にあるように、先順位者が 一度受給権を取得すれば、それ以外の者が受給権を取得することはできない(胎児が出生した場合を除いて)。 すなわち、最初の受給権者が失権すれば、それで遺族厚生年金の受給は終了となる。ところが、遺族共済年金には ・この59条2項に相当する規定がないので、最下位の者が失権するまで、転給により支給が続けられていた。 ・また、受給権発生後に先順位となるべきものが生じた場合は、それが発生した時点から受給者が入れ替わっていた。 一元化後は、
7.保険料
注1:これまでの保険料の一部は職域加算のために使われていたので、一元化までの保険料は、 実質的には、さらに1.6%程度低かったといわれている。 注2:上記注1と同様であり、一元化前はさらに1.2%程度低かったといわれている。
8.職域加算の廃止と共済年金積立金の処分 (1)職域加算 今後の検討(改正法附則2条) 「公務員共済の職域加算額の廃止と同時に新たな公務員制度としての年金の給付制度を設けることとし、そのあり方について、平成24年中に検討を行い、その結果に基づいて、別に法律で定めるところにより、 必要な措置を講ずるものとする」 私学共済についても同様。 今後の検討(改正法附則3条) 「この法律の施行日の前日において組合員等期間を有し、かつ同日において改正前共済組合法等による給付の受給権を有しない者に対して、施行日以後に支給する給付において、公務員共済等の職域加算額の廃止に伴う経過措置は、別に法律で定める」
(2)積立金の処分 ・現在の厚生年金の積立金は143.5兆円。約4.2年分の給付費用に相当するといわれている。 ・これを一つの基準とすると、26年度末の見込みで、国・地方公務員共済に関しては、職域加算部分を除く給付費用の4.2年分は24兆円。 これを厚生年金に拠出するとしても、20.7兆円残る。 ・私学共済に関しては、職域加算部分を除く給付費用の4.2年分は1.7兆円で2兆円残る。 ・残余の積立金の一部は、職域加算部分の既受給者には使われるが、それでもまだ余裕があるといわれている。 ・厚生年金への拠出額の妥当性、残余の積立金の処分方法が、今後の論議の的になっている。 9.追加費用の負担 @追加費用とは 昭和34年10月前(恩給制度期間)に採用され、34年10月(国家公務員共済組合法の施行)以降退職の者については、恩給期間は主として国庫負担による支給が前提であったため、この部分を一元化後の厚生年金法で処理しようとすると、追加費用が発生する。 地方公務員についても同様の事情にあり。 平成24年度で元国家公務員に対する国庫負担分が約2,300億円、元地方公務員に対する地方公共団体負担が約8,600億円といわれている。 A恩給期間の年金額を減額 追加費用に要する財源を少しでも減らすため、恩給期間にかかる年金給付については、負担に見合った水準にまで引き下げることとし、一律に27%ダウン させる。 ただし、減額率の上限は共済年金額全体の10%、年金額が230万円以下は減額しないという緩和措置を設ける。 |