社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


 

 年金機能強化法 により、近い将来の年金の仕組みはこうなる。(その1)

 主要な項目と実施目標時期
 @受給資格期間の短縮
   税制抜本改革の施行時期(消費税10%化)に合わせて平成27年10月から実施を予定
 A短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大(原案を一部修正)
   
平成28年10月1日から実施 
 B遺族基礎年金の父子家庭への支給等
   消費税8%化に合わせて平成26年4月から実施を予定
 C産前産後休業期間中の厚生年金保険の保険料免除
   交付の日(24年8月22日)から2年以内の政令で定める日から実施
 D特定年度(基礎年金の国庫負担割合を2分の1とするための安定した財源の確保が図られる年
  度)の決定
   消費税8%化に合わせて平成26年4月実施を予定
 E低所得高齢者・障害者等への福祉的給付措置、高所得者の年金額調整、1号被保険者の産前
  産後期間中の国民年金保険料の免除の検討(原案に追加)  
   実施時期は個別に。
 Fその他の規定(給付関係)の改正
   交付の日(24年8月22日)から2年以内の政令で定める日から実施
 Gその他の規定(保険料・その他)の改正
   交付の日(24年8月22日)から2年以内の政令で定める日から実施
 H低所得者の老齢基礎年金等の額の加算(原案から削除
 I高所得者の老齢基礎年金の支給停止(原案から削除

1.受給資格期間の短縮(消費税の10%化に合わせて平成27年10月から実施を予定)
(1)老齢基礎年金
 支給要件(国民年金法26条の改正)
 「老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例を除く)を有する者が65歳に達したきに、その者に支給する。
 ただし、その者の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年に満たないときは、この限りでない」

 支給要件の特例(附則9条の改正)
 「保険料納済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上であるものは、26条ただし書に該当しないものとみなし、合算した期間が25年以上であるものは、遺族基礎年金の支給要件(長期要件に限る)の規定に適用については、25年以上であるものとみなす」
⇒すなわち
・保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上あれ
 ば、老齢基礎年金の受給権ありとする。
・遺族基礎年金において、保険料納付要件を問わない長期要件については、保険料納付
 済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算して25年以上必要である。

(2)その他の老齢・退職年金
 老齢基礎年金の受給資格期間要件を前提としている「老齢厚生年金」、「退職共済年金」及びこれに準ずる旧法による「老齢年金」も同様で、 合算した期間が10年以上あり、他の要件を満す限り、受給権が発生。

 参考情報
 65歳以上の無年金者は約42万人、そのうち保険料納付済期間が10年以上ある者は17万人程度、この受給要件緩和のために新たに要する公費は0.3兆円程度といわれている。
(3)寡婦年金(国民年金法49条の改正)
 「寡婦年金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫(保険料納付済期間又は学生納付特例以外の保険料免除期間を有する者に限る)が死亡した場合において、夫の死亡の当時夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)が10年以上継続した65歳未満の妻があるときに、その者に支給する。
 ただし、その夫が障害基礎年金の受給権者であったことがあるとき又は老齢基礎年金の支給を受けていたときは、この限りでない」
⇒すなわち
 1号被保険者としての保険料納済期間と保険料免除期間を合算した期間が10年以上あり、他の要件を満たせば寡婦年金の受給権あり。
 (保険料の掛け捨て防止という意味もあるため、合算対象期間は含めない

(4)遺族年金の長期要件
 厚生年金保険法(58条1項4号の改正)
 「老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が死亡したとき」
 ・合算対象期間は含めてもよい。
 ・遺族共済年金についても同様
⇒すなわち
 老齢厚生年金、退職共済年金、旧法の「老齢厚生年金」の受給資格期間を前提としている
 「遺族厚生年金」、「遺族共済年金」の長期要件については、
 従来通り、「保険料納済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を含めて25年以上」ないと、長期要件には該当しない。

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