社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


 

 年金機能強化法により、近い将来の年金の仕組みはこうなる。(その2)

2.短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大(平成28年10月1日から実施)
(1)適用除外(12条の改正)
 「次の各号のいずれかに該当する者は、厚生年金保険の被保険者としない」
 6号(新設)
 事業所に使用される者であつて、
 週所定の労働時間が、同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満又は
 月所定の労働日数が、4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
 イ 週所定の労働時間が20時間未満
 ロ 当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれない
 ハ 資格取得時の報酬が、8万8千円(原案は7.8万円)未満
 ニ 学校教育法に規定する高等学校の生徒、大学の学生その他であること。
⇒すなわち、
・週所定の労働時間又は月所定の労働日数が通常の就労者の4分の3未満であっても、週所定労働時間が20時間以上1年以上雇用報酬が8万8千円以上(年収106万円以上)(原案では96万円以上であった)であれば、被保険者になり得る。
・これに伴い、厚生年金の標準報酬月額等級として、1等級88,000円(健康保険4等級)をもうける。  


(2)経過措置(厚生年金保険法附則17条)
 「当分の間、通常の労働者及びこれに準ずる者が常時500人を超えて使用する事業主以外の事業主
 使用される70歳未満の者であって週所定の労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満又は月所定の労働日数が4分の3未満であるものについては、厚生年金保険の被保険者としないものとすること」
常時501人以上使用する事業所においてのみ、適用拡大が図られる。  
 参考情報:該当者は約25万人程度(原案の場合は45万人程度)といわれている。
(3)影響緩和措置
・短時間労働者など賃金が低い加入者が多く、その保険料負担が重い医療保険者に対し、その負担を軽減する観点から、賃金が低い加入者の後期高齢者支援金・介護納付金の負担について、被用者保険者間で広く分かち合う特例措置を導入し、適用拡大によって生じる保険者の負担を緩和する。

(4)施行3年後の検討(附則2条2項) 
「政府は 短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用範囲について、平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること」
⇒施行後3年以内に、さらに対象を拡大したいとしており、この点を法律で明記した。
3.遺族基礎年金の父子家庭への支給等
 消費税8%化に合わせて平成26年4月からを予定
(1)遺族基礎年金(国民年金法37条の改正)
 「遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又は子に支給する」  
⇒[その者の妻」からを「その者の配偶者」に改正。これにより、

・遺族基礎年金の支給対象に父子家庭も含める。

(2) 遺族厚生年金の若年停止(65条の2の改正)
 「夫、父母又は祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が60歳に達するまでの期間、その支給を停止する。ただし、夫に対する遺族厚生年金については、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、夫が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときはこの限りでない

⇒「ただし書き」以降を追加。これにより、
・妻が死亡し、18歳到達未満の子がいる夫が、遺族基礎年金の受給権を得た時は、夫の年齢にかかわらず、遺族厚生年金も同時に支給する。

4.産前産後休業期間中の厚生年金保険の保険料免除
 交付の日(24年8月22日)から2年以内の政令で定める日から実施

(1)産前産後休業期間中の保険料の徴収の特例(厚生年金保険法81条の2の2の改正)
 「産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働大臣に申出をしたときは、当該被保険者に係る保険料であつてその産前産後休業を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係るものの徴収は行わない」 
・労基法にいう産前産後休業期間中の厚生年金保険料は、申出により免除に。
・免除期間は、休業を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月まで
・健康保険の保険料も同様に免除

(2)産前産後休業を終了した際の改定(厚生年金保険法23条の3の新設)
 「厚生労働大臣は、産前産後休業を終了した被保険者が、当該産前産後休業を終了した日において、当該産前産後休業に係る子を養育する場合において 、
 その使用される事業所の事業主を経由して厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に申出をしたときは、
 産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3月間(産前産後休業終了日の翌日において使用される事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払の基礎となつた日数が17日未満である月があるときは、その月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を改定する。
 ただし、産前産後休業終了日の翌日に育児休業等を開始している被保険者は、この限りでない」
 「同2項 前項の規定によつて改定された標準報酬月額は、産前産後休業終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌月からその年の8月(当該翌月が7月から12月までのいずれかの月である場合は翌年の8月)までの各月の標準報酬月額とする。  
・産前産後休業期間後に職場復帰したものの、短時間労働の従事などにより、報酬が下がった場合は、随時改定の要件(報酬支払日数が3か月とも17日以上、2等級以上の差)を満たさなくても、標準報酬月額変更の申出が可能。
・休業期間終了日翌日(復帰初日)の月、翌月、翌翌月の3か月間(支払日数が17日未満の月は除く)の平均額から標準報酬月額を求め、その翌月から次の定時改定まで変更。
・産前産後休業期間後に直ちに育児休業に入ったときは、育児休業期間中も保険料免除となり、復帰後に同様の方法で改定可能

5.特定年度(基礎年金の国庫負担割合を2分の1とするための安定した財源の確保が図られる年度)
 税制抜本改革の施行時期(8%化)に合わせて平成26年4月からを予定 
 特定年度の明示(国民年金法附則13条7項の改正)
 「平成19年度から平成26年度(以下、「特定年度」という)の前年度までの各年度における国庫負担の規定の適用については、1号被保険者に要する費用の3分の1に1000分の32を加えた率……とする」  
 ここで、特定年度とは、基礎年金の国庫負担割合を2分の1とするための安定した財源の確保が図られる年度のこと。
 つまり、
 基礎年金の国庫負担については、
 15年度は1/3、16年度以降はこれに毎年少しづつ上積みして、
 平成20年度には、1/3+1,000分の32(すなわち、約36.5%)であったが、
 平成26年度を特定年度とすることにより、
・平成21年度から25年度までは、その都度臨時的な財源を探すことによって、1/2化を。
・平成26年度からは、税制抜本改革による消費税増税によって、恒久的に1/2化する。