平成28年度の年金額はこのように決まった。 @基本となる数値 ・物価変動率(27年度の物価指数/26年度の物価指数)は 1.008(+0.8%) ・実質賃金変動率(24年度から26年度賃金水準の平均値)は 0.992(-0.8%) ・可処分所得割合変化率(25年度の値/24年度の値)は 0.998(-0.2%) 注:名目賃金(標準報酬)から税金や社会保険料等を控除した手取分の変化を表す指数で、実際には、手取率に代わる定数0.91ー厚生年金保険料率/2 ・よって、名目手取賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率=(1+0.008)×( 1-0.008 )×(1-0.002)=1+(0.008-0.008-0.002)-0.008×0.008-0.008×0.002+0.008×0.002+0.008×0.008×0.002 ≒ 1+(0.008-0.008-0.002)=0.998 この値は+0.8%−0.8%−0.2%=−0.2%からも求めることができる。 チョッとト一言 1より少し小さい数をかけるときは%変化分を引く。1より少し大きい数をかけるときは%変化分をたす。1より少し小さい数で割るときは%変化分をたす。1より少し大きい数で割るときは%変化分を引く。 1.1 国民年金法による年金額の改定(改定率の改定による) ・基本原則は、新規裁定者(65歳から67歳まで)は名目手取賃金変動率(0.998)により、0.2%ダウン、既裁定者(68歳以上)は物価変動率により0.8%アップとなるところ、 ・新規裁定者の年金額≧既裁定者の年金額となるように調整する規定注1により、新規裁定者、既裁定者いずれも、現状維持(±0%) ・マクロ経済スライド調整率をかけると、年金額が前年度より下がるときは、マクロ経済スライドは発動しないというルール注2により、調整率の出番もなし。 ・以上から、28年度の改定率の改定に適用する数値は1.0(変化なし)となった。 注1:国民年金法27条の2(新規裁定者)の3項 「名目手取り賃金変動率が1を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、物価変動率を基準とする。ただし、物価変動率が1を上回る場合は、1を基準とする」 同27条の3(既裁定者)の2項2号 「物価変動率が1を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が1を 下回るときは1」 注2:国民年金法27条の3(新規裁定者)、同27条の4(既裁定者)「調整期間における改定率の改定は、調整率を乗じて得た率を基準とする。ただし、当該年度の改定率が前年度の改定率を下回ることとなるときは、1を基準とする」 参考: ・マクロ経済スライド調整率(少子高齢化の年金財政に及ぼす影響の度合いを表す指標) =公的年金被保険者変動率(現役被保険者数の増減率)×平均寿命の延びによる年金財政への影響度合い(今のところ0.997)であり、 28年度は、公的年金被保険者変動率が-0.4%、平均寿命の伸びによる影響が-0.3%から、-0.7%(0.993) もし、名目手取賃金変動率が0.8%アップ、物価変動率が0.2%ダウンの場合: 新規裁定者の年金額はマクロスライド調整率0.7%を働かせて0.1%のアップ。 既裁定者はマクロスライド調整率の適用なしで、0.2%のダウンとなる。 28年度の年金額 28年度の改定率は新規裁定者、既裁定者とも27年度の改定率(0.999)×1.0=0.999 つまり、27年度と変化なし。(ただし、端数処理方法の変更による影響あり) @満額の老齢基礎年金額(=2級の障害基礎年金額=遺族基礎年金額)=780,900円× 0.999=780,119 ≒780,100円 (条文の規定により、四捨五入による100円単位の端数処理) A計算によって求める年金額(四捨五入による1円単位の端数処理) ・1級の障害基礎年金額(2級の障害基礎年金の1.25倍) 975.125円(27年度は975,100円) ・満額にはならない場合の老齢基礎年金額(たとえば、納付月数が300月の場合) 780,100×300/480=487.562.5 ≒487,563円(27年度は487,600円) ・寡婦年金(1号被保険者としての保険料納付済月数と免除月数から計算した老齢基礎年金の額×3/4) B加給年金 ・子への加算(条文の規定により100円単位) 2人目まで224,500円、3人目以降74,800円 ・振替加算は1円単位(条文に規定なし) C支払い月における支給額(切り捨てによる1円単位の端数処理+2月に精算) 年金額が487,563円の場合 487,563/6=81,260.5 ≒81,260円 ただし、来年2月は81,260+0.5×6=81,263円(1年間では487,563円になる) (27年度においては、487,600/6=81,266.666≒81,266円、1年間では487,596円であった) 1.2厚生年金保険法による年金額の改定(再評価率表の改定による) @本則(28年度再評価率表の改定による方法) 基本的には国民年金法による改定率の改定方法と同じようにして、毎年、再評価率を求め、自動的に再評価率表を書き換えることにより、年金額を改定する。 28年度の再評価率は国民年金法による改定率の改定と同様に、新規裁定者、既裁定者とも1.0であり、マクロスライド調整率の出番はない。 よって、28年度の再評価率表は、基本的には27年度からの変化はない(ただし、至近4年度の再評価率表の書き換えは変則的であるため、少し異なる) A従前額改定率による改定(H6年度再評価率表と5%適正化前の給付条率による年金額×従前額改定率による) 従前額改定率の改定は、既裁定者の改定率で行うので、28年度は基本的には変化なし(ただし、資金年度の被保険者期間に応じた特例等があるので、実際には少し複雑である) 28年度の年金額 大部分の者は本則による改定と思われるので、28年度の年金額は27年度と基本的には同じ(至近年度の加入履歴があるなどを除く)(ただし、端数処理の変更による影響あり) @計算によって求める年金額等(四捨五入による1円単位の端数処理) ・老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金 ・障害手当金 A条文の規定により100円単位の端数処理とすることが決まっている者(27年度と同じ額) ・障害厚生年金の最低保障額:585,100円 ・障害手当金の最低保証額:1,170,200円 B加給 ・配偶者加給年金(特別加給を含む)、子への加給年金、中高齢の寡婦加算(いずれも条文の規定により100円単位) ・経過的寡婦加算は1円単位(条文に規定なし) C支払い月における支給額(切り捨てによる1円単位の端数処理+2月に精算) 国民年金法と同様の仕組み |