平成29年度の年金額はこのように決まった。 @基本となる数値 ・物価変動率(28年度の物価指数/27年度の物価指数)=0.999(-0.1%) ・実質賃金変動率(25年度から27年度賃金水準の平均値)=0.992(-0.8%) ・可処分所得割合変化率(26年度の値/25年度の値)=0.998(-0.2%) 注:名目賃金(標準報酬)から税金や社会保険料等を控除した手取分の変化を表す指数で、実際には、手取率に代わる定数0.91ー厚生年金保険料率/2 ・よって、名目手取賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率=0.999×0.992×0.998 ≒0.989(-1.1%) この値は、-0.1%-0.8%ー0.2%=-1.1%からも求めることができる。 1.1 国民年金法による年金額の改定(改定率の改定による) ・基本原則によれば、新規裁定者(65歳から67歳まで)は名目手取賃金変動率(0.989)により1.1%ダウン、既裁定者(68歳以上)は物価変動率により0.1%ダウンとなる ・ただし、賃金も物価も下がったが、物価の下がりの方が小さいので、新規裁定者も物価変動率による改定となって0.1%ダウン(新規裁定者の年金額は既裁定者のそれを下回ってはならないというルール) ・年金額が前年度より下がる場合は、マクロ経済スライドは発動しないというルールにより、調整率の適用はなし。 ・以上から、29年度の改定率の改定に適用する数値は、新規裁定者、既裁定者とも0.999(-0.1%)となった。 参考: ・マクロ経済スライド調整率は少子高齢化の年金財政に及ぼす影響の度合いを表す指標で 公的年金被保険者変動率×平均寿命の延びによる年金財政への影響度合いから求めた係数(今のところ0.997)。よって、 29年度値=0.998(-0.2%)×0.997(-0.3%)≒0.995(-0.5%) 今後の動き ・平成30年4月以降は、マクロ経済スライドによる年金額の調整に未達がある場合は、翌年度以降に持ち越こされる。上記の例が30年に発生すると、0.5%が31年度以降に持ち越されて適用される。 ・平成33年4月以降は、賃金も物価も下がったが物価の下がりの方が小さい場合は、新規裁定者、既裁定者とも賃金による改定に変更となる。(また、物価は上がったが賃金が下がった場合、現行では真ん中をとって1(不変)としていたのが、賃金による改定に変更となる) つまり、年金財政の悪化をできるだけ避ける方向に合わせるので、上記の例の場合、新規裁定者、既裁定者とも1.1%のダウンとなる。 29年度の年金額(国民年金法) 29年度の改定率は新規裁定者、既裁定者とも、28年度の改定率0.999に0.999をかけた0.998となる。 @満額の老齢基礎年金額(四捨五入による100円単位の端数処理) =780,900円×0.998=779,338 ≒779,300円 (28年度は780,100円) A計算によって求める年金額(四捨五入による1円単位の端数処理) ・1級の障害基礎年金額(2級の障害基礎年金の1.25倍) =974.125円 (28年度は975,125円) ・老齢基礎年金の額=779,300×(保険料納付月数と免除月数に応じた換算月数の合計)/(加入可能年数(昭和16年4月2日以降生まれの者は40年)×12) B加給年金 ・子への加算(条文の規定により100円単位) 2人目までは224,700×0.998=224,300円 (28年度は224,500円) 3人目以降74,900×0.998=74,800円 (28年度は74,800円) ・振替加算は1円単位(1円未満四捨五入) C支払い月における支給額(切り捨てによる1円単位の端数処理+2月に精算) 年金額が満額の場合 779,300/6=129,883円 1.2厚生年金保険法による年金額の改定 以下の(1)と(2)のうち、高い方の額とする。 (1)本則(再評価率表の改定による方法) 国民年金法による改定率の改定に準じて再評価率を求め、再評価率表を書き換えることにより、平均標準報酬月額、平均標準報酬額を増減させて、年金額を改定する。 ただし、定額部分は国民年金法の改定率の改定による。 29年度の再評価率は新規裁定者、既裁定者とも0.999であり、マクロスライド調整率の出番はない。 定額部分=1,628円×0.998(=1,625)×被保険者期間月数 (28年度の定額単価は1,626円) ただし、昭和21年4月1日以前生れの者には、定額単価に生年月日による読替えがあり、被保険者期間月数に生年月日による上限があ る。 報酬比例部分=H29年再評価率表による平均標準報酬月額×1,000分の7.125(生年月日による読替えあり)×H15.4.1前の被保険者月数+H29年再評価率表による平均標準報酬額×1,000分の5.481(生年月日による読替えあり)×H15.4.1以後の被保険者月数 (2)従前額保障(従前額改定率の改定による方法) 定額部分は上記(1)に同じ。 報酬比例部分={H6年再評価率表による平均標準報酬月額×1,000分の7.5(生年月日による読替えあり)×H15.4.1前の被保険者月数+H6年再評価率表による平均標準報酬額×1,000分の5.769(生年月日による読替えあり)×H15.4.1以後の被保険者月数)}× 従前額改定率 ここで、従前額改定率の改定は、既裁定者の改定率の改定で行う。 29年度の従前額改定率は、28年度の1.0(昭和13年4月2日以降生まれの場合は0.998)に、0.999を掛けることにより、0.999(昭和13年4月2日以降生まれの場合は0.997) 29年度の年金額(厚生年金法) 大部分の者は本則による改定と思われる。 29年度の年金額は、原則として0.1%のダウンとなる。(ただし、至近年度に被保険者期間がある者や端数処理による影響によって、若干異なる場合もありうる) @計算によって求める年金額等(四捨五入による1円単位の端数処理) ・老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金 ・障害手当金 A条文の規定により100円単位の端数処理とすることが決まっているもの ・障害厚生年金の最低保障額:779,300×3/4=584,500円 (28年度は585,100円) ・障害手当金の最低保証額:584,500×2= 1,169,000円(28年度は1,170,200円) B加給(国民年金法の改定率による) ・配偶者加給年金額(条文の規定により100円単位) 昭和18年4月2日以降生まれの場合は、 224,300+165,800×0.998=389,800円 (28年度は390,100円) ・中高齢の寡婦加算(条文の規定により100円単位) 779,300×3/4=584,500円 (28年度は585,100円) ・経過的寡婦加算は1円単位(1円未満四捨五入) C支払い月における支給額は1円単位(1円未満切捨て、端数は2月に精算 |