社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


  
国民年金、社会保険事務所が勝手に免除手続き
 
 
5月23日付けの読売新聞によると、東京、大阪、長崎各社会保険事務局が、収入が基準を下回っているため国民年金保険料の納付が免除されたり猶予されたりする人について、本人からの申請のないまま免除や猶予の手続きを取っていたという。約4万3000人以上にもなるらしい。
 このうち大阪では昨秋以降、免除に該当すると思われる低所得者6万3277人に保険料の免除申請書を郵送した。「申請しない場合は連絡を」などと記した案内文を同封したが、連絡のなかった3万7406人に関しては、「免除の意思を確認できた」と解釈して手続きを行ったという。
 無断での手続きについては、担当幹部も了承しており、「未納率を下げ、将来の年金受給者を増やすためだった」と釈明しているという。 
 いっときに比べて、保険料を納付せずに放置していくとさまざまなデメリットがあること、免除が認められば保険料を納付したと見なされること(ただし、老齢基礎年金だけは減額される)、10年以内に追納すれば完全に穴埋めできることなどが、かなり理解されるようになってきた。
 一方では、前回書いたように、滞納者に対しては厳正な処分も辞さない方針でもある。
 しかし、今回問題の発覚した社保事務局の態度はどういうことなのだろうか? 
 釈明を聞いた範囲では、親切心からではなく、単なる未納率低下のノルマ達成のためらしい。
 一瞬、「申請しない場合は連絡を」というのは、「申請する場合は申請書を送り返すように」の書き間違いではないか思ったが、これでは意図的にそうしたとしか思えない。
 何よりも心配なのは、これではますます社保事務所や事務局が信用を失ってしまう。年金相談にいっても手続きをしにいっても、被保険者や受給者のために仕事をやってくれているのか、自分たち組織の論理だけで動いているのか、疑いがもたれてしまう。
 社労士の立場からいえば、社保に協力することはやぶさかでないが、もっとしっかりやってもらいたいと思う。
 また、特に1号被保険者や退職後の人にとっては、社労士という存在はあまりにも遠すぎる。
 もっと身近にいて相談にのってくれる社労士のあり方について、個人レベルでも社労士会、連合会レベルでも研究してみるいい機会を与えてくれた。
 そうは思うが、果たして自分で何ができるか。何からはじめるべきか、はたと迷う。

平成成18年5月23日)

 

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