社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


 
令和元年度の年金額はこのように決まった。
 0 基本となる数値
・物価変動率(30年度の物価指数/29年度の物価指数)=1.010(+1.0%)
・実質賃金変動率(27年度から29年度実質賃金変動率の平均値)=0.998(-0.2%)
・可処分所得割合変化率(28年度の値/27年度の値)=0.998(-0.2%) 
 注:名目賃金(標準報酬)から税金や社会保険料等を控除した手取分の変化を表す指数で、実際には、(手取率に代わる定数0.91ー厚生年金保険料率/2)であり、
  (0.91-0.18182/2)/(0.91−0.17828/2)=0.998
・よって、名目手取賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率=1.010×0.998×0.998=(1+0.010)×(1-0.002)×(1-0.002)=1+(0.010-0.002-0.002)+negligible small≒1.006(+0.6%)
 注1:1.0に非常に小さい数値で掛け算する場合
     1.0よりほんの少し大きい場合は足し算、1.0よりほんの少し小さい場合は引き算      
 注2:1.0に非常に小さい数値で割り算する場合
     1.0よりほんの少し大きい場合は引き算、1.0よりほんの少し小さい場合は足し算
1 令和元年度の基礎年金額
1.1 国民年金法による年金額の改定方法(改定率の改定)
@基本原則によれば、新規裁定者(65歳から67歳まで)は名目手取賃金変動率により0.6%アップ、
 既裁定者(68歳以上)は物価変動率により1.0.%アップとなるはず。
 ところが、賃金も物価も上がったが、賃金の上がりの方が小さいので「既裁定者は少し遠慮せよ」ということで、既裁定者も賃金価変動率による改定となって0.6%のみのアップ(新規裁定者の年金額は既裁定者のそれを下回ってはならないというルール)
Aさらに、現在は年金財政が苦しい「財政調整期間」中であるため、年金額が前年度より上がった場合は、マクロ経済スライドにより、上がり方にブレーキがかかる。
・マクロ経済スライド調整率(少子高齢化の年金財政に及ぼす影響の度合い)元年度値=公的年金被保険者変動率(27年度から29年度の被保険者数変動率の平均値)×平均寿命の延びによる年金財政への影響度合いから求めた係数(今のところ0.997)
 =1.001(+01%)×0.997(-0.3%)≒0.998(-02%)
⇒よって、元年度の年金額対前年度比は1.006(+0.6%)×0.998(-02%)≒1.004(+04%)となるところ、
・さらに加えて、平成30年4月からは、マクロ経済スライドによる年金額の調整に未達成分がある場合は特別調整率として、翌年度以降に持ち越こされることになっていた。
 平成30年度の調整率は0.997(-0.3%)であったが、調整前年金額が29年度に比べて増加しなかった(同額であった)ため、年金額が前年度よりダウンしてまで、調整は行われなかいことから、未達成の調整率0.997(-0.3%)が残ったままになっていた。
B結局、令和元年度の年金額対前年度比は1.006(+0.6%)×0.998(-02%)×0.997(-0.3%)≒1.001(+01%)
 この1.001が令和元年度の改定率の改定値

1.2 実際の年金額  基本原則は、満額の老齢基礎年金額=一定額(780,900)×元年度改定率
 
ここで、元年度改定率=前年度改定率(0.998)×改定率の改定(1.001)=0.999
@満額の老齢基礎年金額(四捨五入による100円単位の端数処理)=780,900円×0.999=780,119 ≒780,100円 (30年度は779,300円)(0.1%アップ)
 2級の障害基礎年金額、遺族基礎年金額も同じ。
A計算によって求める年金額(四捨五入による1円単位の端数処理) 
・老齢基礎年金の額=780,100×(保険料納付月数と免除月数に応じた換算月数の合計)/(加入可能年数(昭和16年4月2日以降生まれの者は40年)×12)
・1級の障害基礎年金=780,100×1.25=975,125円

.令和元年度の厚生年金額
2.1厚生年金保険法による年金額の改定 
 以下の@とAのうち、高い方の額とする。
@本則(最新再評価率表の改定による方法) 
 国民年金法による改定率の改定に準じて再評価率を求め、再評価率表を書き換えることにより、平均標準報酬月額、平均標準報酬額を増減させて、年金額を改定する。
⇒ 令和元年度の再評価率表は、新規裁定者、既裁定者とも、原則として、30年度再評価率表の値×1.001により行う。
 本則による年金額=平均標準報酬月額×1,000分の7.125×平成15年4月1日前の被保険者月数+平均報酬報酬額×1,000分の5.481×平成15年4月1日以後の被保険者月数

A従前額保障(従前額改定率の改定による方法)
 再評価率表は平成6年度のものを使用して、平均標準報酬月額、平均標準報酬額を求める。
 年金額計算のための乗数は7.125ではなく7.5、5.481ではなく5,769とし、最後に従前額改定率を乗じて求める。
  従前額保障による年金額={平均標準報酬月額×1,000分の7.5×平成15年4月1日前の被保険者月数+平均標準報酬額×1,000分の5.769×平成15年4月1日以後の被保険者月数)}×従前額改定率

2.2  令和元年度の老齢厚生年金額
 大部分の者は本則による改定と思われる。
 元年度の年金額は、原則として0.1%のアップとなる。(ただし、至近年度に被保険者期間がある者や端数処理による影響によって、若干異なる場合もありうる)
 

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