社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


 
 厚生年金と共済年金を一元化した後はこうなる(被用者年金制度の一元化 その1)
 
(被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律)
 
・国民年金と厚生年金などのオール一元化は先送り(25年度提案か?)とし、とりあえず被用者年金制度だけを、厚生年金保険法の改正と公務員共済組合法・私学共済組合法の年金に関する規定の廃止によって、一元化する。
・施行日は、「追加費用の削減」を除いて、平成27年10月1日(確定)
1.適用除外、実施機関、年齢制限、被保険者期間
1.1 適用除外(12条の改正)
 「次の各号のいずれかに該当する者は、厚生年金保険の被保険者としない」
  1号 国、地方公共団体又は法人に使用される者であって、
 ・恩給法に規定する公務員及び公務員とみなされる者
 ・法律によって組織された共済組合の組合員
 ・私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者
⇒公務員(国家公務員、地方公務員等)共済組合、私立学校教職員共済制度の加入者を厚生年金被保険者から除外する規定を削除
1.2 実施機関(2条の5、新設)
 「この法律における実施機関は、次の各号に掲げる事務の区分に応じ、当該各号に定める者とする。
 @1号被保険者(従来の厚生年金被保険者):厚生労働大臣
 A2号被保険者(国家公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者):国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会
 B3号被保険者(地方公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者):地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会
 C4号被保険者(私立学校教職員共済制度の加入者たる厚生年金保険の被保険者):日本私立学校振興・共済事業団
⇒共済組合員等を厚生年金2号、3号、4号被保険者とする。
 また、これらの保険者を実施機関として、引続き主要な年金関連業務を分担する。
1.3 年齢制限(厚生年金保険法9条、改正せず)
 「適用事業所に使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする」
⇒国家公務員・地方公務員共済組合においては、年金に関する規定に年齢制限がなかったが、厚生年金に統一。
1.4 被保険者期間
(1)資格の得喪の確認(18条4項の新設)
「第2号厚生年金被保険者、第3号厚生年金被保険者及び第4号厚生年金被保険者の資格の取得及び喪失については、前三項の規定(事業主からの届出、請求、職権による確認)は、適用しない」
⇒被保険者期間の確認は、被保険者の種別(1号、2号、3号、4号)ごとにそれぞれの実施機関が行う。

(2)老齢厚生年金の受給権者及び年金額の特例(78条の26新設)
 「二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る老齢厚生年金について、42条(老齢厚生年金の受給資格要件)の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用する」
⇒厚年金被保険者期間1カ月以上の要件は、被保険者種別(1号、2号、3号、4号)ごとに確認して、各号に該当する受給資格の有無を判定する。
 ただし,特別支給の老齢厚生年金における1年以上の要件は、各号の期間を合算して判定
(平成27年10月1日以降に受給権が発生する者に限る。つまり、旧共済年金期間が6カ月、旧厚生年金期間が6カ月ある者には、平成27年10月1日以降、厚生年金期間が12カ月とみなされ、特別支給の老齢厚生年金の支給対象になりうる。
 一方、27年10月1日前に特別支給の退職共済年金の受給権が発生している者については、旧厚生年金期間が12か月未満であれば、そのまま特別支給の退職共済年金の支給のみが続き、65歳になって初めて老齢厚生年金に切り替わり、旧厚生年金期間も年金額に反映されることになる)
 「同2項 2以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る老齢厚生年金について、43条(老齢厚生年金の支給額)の規定を適用する場合においては、同条1項の(平均標準報酬額を計算する)被保険者であつた全期間並びに同条2項の(計算の基礎となる)被保険者であつた期間及び3項(退職時改定における被保険者であつた期間は、各号の厚生年金被保険者期間ごとに適用し、同条1項の(年金額を計算するための)被保険者期間は、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用し、同条3項(退職時改定)における被保険者の資格(喪失)は、被保険者の種別ごとに適用する」
年金額の計算、退職時改定などは、被保険者種別(1号、2号、3号、4号)ごとに行う
 (過去の標準報酬月額の算定方法などが異なる)

(3)加算年金に関する被保険者期間の合算(8条の27の新設)
 「二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る老齢厚生年金の額については、その者の二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして44条(加給年金)の規定を適用する」
各種別を合計して20年以上あれば、加給年金の資格があることに。
 中高齢の寡婦加算も同じ。(78条の32の3項)

(4)経過措置
 「旧国家公務員共済組合期間、旧地方公務員共済組合期間及び旧私立学校教職員共済加入者期間は、厚生年金保険の被保険者であった期間と見なす」  (改正法附則7条)
 「施行日前において改正前共済法の規定による年金給付の受給権を有していた者に支給する老齢厚生年金の額については、旧共済組合期間等は算定の基礎とはしない」((改正法附則11条)
⇒施行日前の共済組合における組合員期間、加入者期間は、施行日以降、厚生年金被保険者期間に。ただし、重複して年金を支給することはない。
 要するに、

・70歳未満であれば、国家公務員・地方公務員共済組合の共済組合員、私立学校教職員共済制度加入者も厚生年金の被保険者となる(それぞれ、2号、3号 4号被保険者)
・厚生年金、国家公務員・地方公務員共済組合、私立学校教職員共済制度間の移動は、資格の得喪ではなく被保険者種別の変更となる。
・老齢厚生年金の支給要件の判定、年金額の計算、退職時改定などは、被保険者種別(1号、2号、3号、4号)ごとに行う。
・配偶者や子に対する加給年金、中高齢の寡婦加算などについては、合算して20年以上あればよいことに。 

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