国年法・厚年法における請求・申出・申請について

社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


   国年法・厚年法における請求・申出・申請について(給付に関わるものに限る)
              
1.1 裁定請求主義
 「保険給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基づいて、実施機関が裁定する」(厚年法33条)
 「給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する」 (国年法16条)
 よって、「老齢基礎年金(障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金、老齢厚生年金、障害厚生年金、障害手当金、遺族厚生年金)は・・・・・支給する」とあるが、いずれも上記の裁定請求主義をもとに、請求を前提としている。
 
2.上記以外は、「請求できる」として、個々の条文で規定されている。
@脱退一時金(国年法附則9条の3の2、厚年法附則29条)
 「当分の間、・・・・脱退一時金の支給を請求することができる」
 注:脱退手当金は旧厚年法が適用されるので、「支給する」
A老齢基礎年金(老齢厚生年金)の繰上げ(国年法附則9条の2、厚年法附則13条の4他)
 「老齢基礎年金(老齢厚生年金)の支給繰上げの請求をすることができる」
B障害者特例(厚年法附則9条の2)
 「特別支給の老齢厚生年金の受給権者が・・・(障害者特例に該当したときは)老齢厚生年金の額の計算の特例の適用を請求することができる」
⇒「特別支給の老齢厚生年金受給権者障害者特例請求書」で請求する。
 なお、長期特例、船員・坑内員の特例の場合は、「老齢厚生年金の額は障害者特例の規定の例により計算する」(厚年法附則9条の3、9条の4) つまり、請求行為は不要。
C事後重症(国年法30条の2、厚年法47条の2)
 「・・・65歳に達する日の前日までに障害基礎年金(障害厚生年金)の支給を請求することができる」
・請求した日に(当然、請求が認められた場合に限る)受給権が発生する。
・20歳前傷病の事後重症についても同様(国年法(30条の4の2項)
D未支給の年金(国年法19条、厚年法37条) 
 「年金給付(保険給付)の受給権者が死亡した場合において、・・・・は、自己の名で、未支給の年金の支給を請求することができる」
Eその他に年金額の改定の請求もある。
・「障害基礎年金(障害厚生年金)の受給権者は、障害の程度が増進したことによる年金額の改定を請求することができる」(国年法34条2項、厚年法52条2項)
・「遺族基礎年金の受給権を取得した当時胎児であった子が生まれたときは、遺族基礎年金の額を改定する」(国年法39条2項)
 「被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、その子は、生計を維持していた子とみなす」(厚年法59条3項)
⇒いずれの場合も実際には「遺族基礎・遺族厚生年金額改定請求書」で請求。
 
2.申出
 受給権のある者が、一定の取扱いを受けることを選択する。
@ 繰下げ支給(国年法28条、厚年法44条の3) 
 「老齢基礎年金(老齢厚生年金)の受給権を有する者は、・・・・支給繰下げの申出をすることができる」
 ただし、繰り下げの場合は、実質的には請求と同じと考えてよい。
(a) 老齢基礎年金あるいは老齢厚生年金の請求をしたことがある者の場合:
 すなわち、特別支給の老齢厚生年金の受給権があった者、65歳以降に老齢基礎年金(老齢厚生年金)のみを受給していた者が申し出た場合は、「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」で請求する。
(b) 老齢基礎年金あるいは老齢厚生年金の請求をしたことがない者の場合:
 はじめて老齢基礎年金・老齢厚生年金を請求し、かつ繰下げ受給したい場合は、通常の「老齢基礎年金・老齢厚生年金裁定請求書」に「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ申出書」を添えて、請求する。
A受給権者の申出による支給停止(国年法20条の2、厚生法38条の2) 
 「年金給付(年金たる保険給付)は、その受給権者の申出により、その全額の支給を停止する」
⇒遺族基礎年金(遺族厚生年金)の優先受給権者である配偶者が、支給停止を申し出て、子に受給させることも可能。
⇒いつでも申し出を撤回できる。
 
3.申請
@併給できない年金の組み合わせのうち、どれかを選択して受給する場合
・併給できない年金は一旦すべて支給停止となり、受給権者がどれか一つを選択することにより、
 「支給の停止の解除を申請できる」(国年法20条2項、厚年法38条2項)
 「年金受給選択申出書」で申請する。
A遺族基礎年金(遺族厚生年金)の支給停止
・受給権を有する子が複数の場合で、1年以上行方不明の子がいるときは、他の子の申請により、支給停止(金額アップ)となる」(国年法42条、厚年法68条)
・受給権を有する配偶者が1年以上行方不明の場合は、受給権を有する他の子の申請により、支給停止(金額アップ)となる」(国年法41条の2、厚年法67条)
 いずれも「遺族基礎・遺族厚生年金受給権者の所在不明による支給停止申請書」による
 
4.届出 (以下の届出名称は略称です)
 給付に直接的に関係する届出も結構多い。
@遺族年金の受給権者が複数ある場合:「遺族年金失権届」などにより、1人当たりの年金額が増額となる。
A加給・加算に関わるもの
・加給、加算にプラスのもの:「受給権者胎児出生届」「加算額・加給年金額加算開始事由該当届」、「加算額・加給年金額支給停止事由消滅届」など、
・加給、加算にマイナスのもの
「加算額・加給年金額対象者不該当届」、「加算額・加給年金額支給停止事由該当届」など
B年金の支給停止・支給停止解除に関わるもの
・支給の再開:「支給停止事由消滅届」など
・支給の停止:「障害給付受給権者障害不該当届」「支給停止事由該当届」など
C届出を怠ると年金が一時差止めになるもの
・本人確認情報の提供を受けることができない年金受給権者の生存確認の届出
・加給年金額・加算額対象者がいる年金受給者の場合の「生計維持確認届」と障害状態にある加算対象者で障害の程度についての審査が必要と判定された場合の「障害状態確認届」
・障害年金等の受給権者で、障害の程度についての審査が必要と判定された場合の「障害状態確認届」など
                                        (以上)