社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


  合算対象期間(昭和36年4月1日前の期間)について
(R05.07.2)
  初めに 
 問題
 昭和36年4月1日前の厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あるとき、昭和36年4月1日以後に国民年金の保険料納付済期間又は保険料免除期間がある場合は、合算対象期間として算入される。(.社会保険労務士試験 国民年金法16年問題4-D)
 
 解説
1. 厚生年金被保険者期間で、昭和36年4月1日前の期間で合算対象期間となるものとは
 国民年金法昭和60年改正法附則8条5項 
 「次の各号に掲げる期間は、附則9条1項の規定(老齢基礎年金支給要件の特例)の適用については合算対象期間に、それぞれ算入する」
 3号:通算対象期間の内、昭和36年4月1日前の期間
 4号:昭和36年4月1日から昭和61年4月1日の前日までの間に通算対象期間を有しないが、昭和61年4月1日以後に保険料納付済期間又は保険料免除期間を有するに至った者の、厚生年金の被保険者期間のうち、昭和36年4月1日前の期間
 4号は通算通則法が廃止されたことによるもので、実施的には3号と同じ。以下では省略
 3号の実質的意味
 「昭和36年4月1日以後に厚生年金(船員保険も含む)の被保険者期間、国民年金の保険料納付済期間・免除期間のいずれかがある者であって、その者の昭和36年4月1日前の厚生年金の被保険者期間(36年4月前の厚生年金等の期間が1年以上、又は36年4月1日以降も含めて1年以上あるものに限る)の昭和36年4月1日前の期間
・一つ一つの期間は1カ月であっても、合算して12カ月以上あればよい。
・ただし、36年4月前の厚生年金等の期間が12か月以上あっても、昭和36年4月1日以後に厚生年金(船員保険も含む)の被保険者期間、国民年金の保険料納付済期間・免除期間のいずれかがある者でないと、実質的な意味での合算対象期間にはならない。
 根拠 
 国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(14条3項)
 「昭和60年改正法附則第8条第5項の規定により同項第3号及び第4号に掲げる期間のうち厚生年金保険の被保険者期間を国民年金の被保険者期間又は合算対象期間に算入する場合において、1年に満たない期間は、その計算の基礎としない。
 ただし、当該期間と昭和36年4月1日以後の期間に係る厚生年金保険の被保険者期間とを合算して1年以上であるときは、この限りでない」
⇒一つ一つの期間は1カ月であっても、合算して12カ月以上あればよい。
 老齢基礎年金支給要件の特例(附則9条)
 「保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生等の納付特例を除く)を有する者のうち、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上であるものは、老齢基礎年金の支給要件期間を満たすものとする」
 通算対象期間(通算年金通則法4条、昭和60年5月1日廃止)
 「通算対象期間とは、次の各号に掲げる期間で、当該公的年金制度において定める老齢又は退職を支給事由とする給付の支給要件たる期間の計算の基礎となるものをいう。ただし、共済組合員については、資格喪失日まで引き続く組合員期間が1年に達しないものを除く」
・国民年金の保険料納付済期間又は保険料免除期間、厚生年金保険の被保険者期間
・国家公務員等共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済組合、農林漁業団体職員共済組合の組合員であった期間
 つまり、共済組合員については、1年未満の期間は加算されない。(5か月の期間と18か月の期間がある場合は、5か月の部分は掛け捨てとなる)
 それ以外については、被保険者期間が1か月以上あれば、それも合計してよい。 
 参考 通算年金通則法についての補足
@いずれの年金も単独では受給資格を取得できないが、1年以上ある通算期間を通算することにより受給資格を満足する場合は、通算老齢年金(国民年金・厚生年金)叉は通算退職年金が各法からその被保険者期間に応じて支給される。
Aいずれかの年金単独で受給資格を取得できる場合は、その年金のほか、受給資格のない被保険者期間に応じて、通算老齢年金叉は通算退職年金が支給される。
B通算年金は旧法適用者に対してのみ、受給権が発生する。
C新法適用者に対する通算対象期間の取扱い。
 通算対象期間は、国民年金法においては保険料納付済期間、合算対象期間に分けられる。
 いずれも、老齢基礎年金の受給資格期間の要件チェックに反映されるが、合算対象期間は老齢基礎年金の額には反映されない。
 一方、老齢厚年年金、一元化前退職共済年金の額については、老齢基礎年金の受給資格期間を満足すれば、原則として、全期間が反映される。 
2.共済組合員の場合の合算対象期間について
 昭和36年4月1日前から昭和36年4月1日以降も引き続いて共済組合員である者の通算対象期間(共済組合員である期間の内、昭和36年4月1日前の期間)は、合算対象期間である。
 厚生年金・船員保険の3と4に対応する。ただし、昭和36年4月1日を挟んで(3月31日と4月1日いずれも)組合員であった期間のみが対象になり、また、一つ一つの組合員期間が12か月未満のものは合算できない。
3. 被保険者期間1年以上で思い出されること
(1)特別支給の老齢厚生年金の受給資格(厚生年金保険法附則8条)
 1号、2号、3号、4号被保険者期間を合算して、1年以上の被保険者期間を有すること。
(2)特例老齢年金(厚生年金保険法附則28条の3)
 「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上に該当しない者で、60歳以上であり、1年以上の1号厚生年金被保険者期間を有し、1号厚生年金被保険者期間と旧共済組合員期間とを合算した期間が20年以上ある者には、 特例老齢年金を支給する
 解答 「正しい」
 ただし、「昭和36年4月1日前厚生年金期間が1年以上」は、必ずしも必要な要件ではない。
 昭和36年4月1日前厚生年金期間が1年未満であっても、昭和36年4月以降の厚生年金期間と合計して1年以上あれば、36年4月1日前の厚生年金期間は合算対象期間となる。
 なお、昭和36年4月1日以降の厚生年金期間については、
 20歳未満の期間及び60歳以後の期間は合算対象期間
 20歳以後60歳歳前までは保険料納付済期間
 また、昭和36年4月1日前後に関係なく、すべての厚生年金期間は厚生年金期間であって、老齢基礎年金の受給資格期間を満足しておれば、すべて老齢厚生年金額に反映される。

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